1 五能線快速「しらかみ5号」
リゾート列車には乗るつもりはなかったのですが、本数が少ない中、最短で能代に行くことができるので、指定券をとって乗ることにしました。
追分駅で待っていると、「しらかみ5号」が入線してきました。橅、青池、くまげらの3編成あるうちの青池でした。
席に座ると窓が大きく展望が効きます。かつて八郎潟があったあたりに広がる広大な田圃は、ちょうど稲刈りのシーズン。黄金の稲穂の波が続いているかと思うと、すでに刈りとりが終わった田も散見できます。
あっという間に東能代駅に到着。ここでスイッチバックして能代駅に向かいます。
2 能代市について
能代市は、現在の人口は約4万5千人。県内では6番目に人口が多い都市です。奈良時代では、蝦夷征伐の拠点となり、中世は檜山安東氏が支配していました。古くから米代川と日本海の舟運の中継地、特に、秋田杉を中心とした材木の積み出し港として栄えたところです。近年は、能代工業高校の活躍により「バスケットボールのまち」、JAXAのロケット実験場があることから「宇宙のまち」を標榜しています。
能代工業高校からは、日本人初のNBAプレーヤー田臥勇太選手をはじめ、多くのバスケットバール選手を輩出しています。
3 駅から風の松原へ
駅のホームのバスケットボールの展示を見た後改札口に行くと、自動改札ではありません。主要駅は東能代駅で、能代駅は駅としてはローカル駅扱いなのでしょうか。
駅舎を出ると、残念ながら、ここも駅前の衰退を隠せないようです。今は、鉄道で訪れる旅行者が少なくなっているかもしれませんが、旅行者にとっては、駅前の様子で、ずいぶん、その町の印象が変わります。
駅の左手前方に城址のような高台があるので、行ってみると、特に城址というわけではないようでした。
駅前通りを直進しても、商店街というほど店はなく、住宅地のようです。
ずっと進むと松を中心とした雑木林が見えてきます。「風の松原」という看板があります。能代市は、市街地と浜の間に東西1kmほどの防砂林があります。南北は14kmあるそうです。江戸時代からコツコツと植林してきたとのことです。これにより市街地は、米代川が運んできた土砂と冬の季節風から守られています。防砂林の中には、ジョギングコースやサイクリングコースが作られています。
これから、防砂林を西へ真っ直ぐ突っ切って、海岸に出ようと思います。木々がけっこう密に生えており、これなら真夏でも直射日光を防いで、快適に散歩ができるのではないでしょうか。
海岸線を走る道路に出ると、前方には「はまなす展望台」が見えます。残念ながら、そこまで行っている時間はなさそうです。その手前あたりが能代港になります。
4 市街地へ
この後は、防砂林の北側を回って、市街地に戻ろうと思います。
北へ進むと米代川の河口に造られた能代港の岸壁に突き当たり、右にカーブして防砂林の北側を回ります。岸壁の向こうが米代川の河口です。その向こうには白神山地が見えています。冬は、なかなかの絶景になりそうです。
能代公園の北側の道を通って市役所に向かいます。この辺りの住宅地は非常に静かで人通りがありません。国道101号線まで出るとクルマが往来しています。市役所脇のケヤキ公園のあたりは、なかなかいい雰囲気です。
市役所は北西の第1庁舎とその南の大会議室の建物は古いのですが、その東側の本庁舎と本庁舎の南側のさくら庭とデッキは平成29年に新築されたものです。なかなか立派です。
そこから南に行くと旧料亭の金勇の建物があります。金勇は、初代金谷勇助(かねや ゆうすけ)氏が1890(明治23)年に創業した料亭です。建物は木都能代を象徴する建物で、県内屈指の料亭として各種宴会や接待、婚礼などに広く使われました。現在の建物は、1937(昭和12)年 に2代目金谷勇助氏によって建てられたもので、国登録有形文化財に登録されました。「木都」の栄華を伝えるこのような遺産こそ、残してもらいたいものです。残念ながら、入館できませんでした。
金勇の西側にはイオンショッピングセンターがありますが、これは、柳町の活性化のために誘致したもののようです。
そこから東に向かって能代市随一の目抜き通りである柳町通りが続いています。アーケードがある商店街です。しかし、ここもシャッター街となっているようです。
能代市は、材木の流通を基盤産業として栄えてきましたが、近年は、秋田杉の流通は、はかばかしくないようです。鉄道路線も問題で、奥羽本線は市街地に近い能代駅ではなく、東能代駅を通り、また、そこが五能線のターミナルとなっています。市の中心が分散されています。また、近年、東能代駅のさらに東にイオンタウンができ、商業地も一層分散されることになっているのではないかと思われます。
能代は、舟運の時代には好条件に恵まれた土地でしたが、鉄道と道路の時代になって取り残されてしまったようです。しかし、住環境は、非常に優れていると思います(冬の厳しさはあると思いますが)。能代駅前と柳町の活性化が急務だと思えます。
「バスケットボールのまち」と言われても、私はそれほど魅力を感じません。いっそのこと、役所、銀行など都市機能は東能代駅周辺に移し、能代駅前から柳町通りあたりは、古い街並みを残して「木都」の伝統を伝える観光拠点として整備したらどうかと思います。また、秋田杉を使った観光拠点をつくり、木工品産業を興し、米代川の舟運の歴史をアピールするとか、二ツ井から能代港まで観光川下りを運行するなどいかがなものでしょうか。さらには、東能代〜能代間の交通も、本数の少ない五能線だけではなく、バス便を増やしたり、新しい交通システムを導入したりする必要があるでしょう。(よそ者が勝手なことを言ってすみません。)
この後、今夜の宿泊地である柳町通りの東端にある能代タウンホテルミナミに入ります。