ごまめの旅日記

街道等の歩き旅を中心に旅の記録を紹介します。

旧街道歩き旅の楽しみ 2 戦略

 今回は、戦略について述べます。

 旧街道歩き旅は首都圏を歩いているうちは自由で気楽です。街道に沿って鉄道路線があり、本数もそれなりにあります。コンビニや食事をする場所もたくさんあります。自由気ままに歩いていても問題ありません。

しかし、

 首都圏から離れると様子は一変します。

 大都市圏一極集中の問題が露わになります。

 鉄道路線がなくなり、あっても本数が極端に少なくなります。コンビニはありません。宿もありません。そのような地方を歩いて旅をするには、ルートを調べ、どこから出発して、どこで宿泊して、どこまで行くか。行きと帰りの交通手段をどうするか、綿密な計画作りが必要です。これを「戦略」と呼ぶことにします。

 インターネットを使って情報を収集し、計画を作っていきます。

 面倒くさいと思う人もいるかもしれませんが、これは、「旧街道歩き旅」の最も楽しい部分だと思います。旅行好きの人には、計画を作るときの楽しさをわかっていただけると思います。

 今回は、私の方法を、例を2つほど挙げて、紹介したいと思います。

1 旧中山道和田峠の攻略

2 旧羽州街道・小坂峠及び金山峠の攻略

 

1 旧中山道和田峠の攻略 

 旧中山道は「一日中、山道(タモリ談)」と言われるように、日本の中央山岳地帯を抜けています。そのため峠がたくさんあります。中でも随一の難所は長野県の和田峠です。現代でも、徒歩で越えようとすると、いくつかの問題点があります。

 ① 峠部分を越えるだけでも約20kmの道のりがある。かつ、峠の頂上は標高1500mの高所

 ②下諏訪宿には、中央線の下諏訪駅があるが、和田宿側は近くに鉄道路線がない。

 

これらの問題点を克服するために以下のような戦略を立てました。

① 長野県の長久保宿までは、上田駅から大屋駅を経由して行くバス便があるので、これを利用する。

② 和田宿に旅館が1軒(本亭旅館)あるので、これを利用する。

長久保宿から和田宿を通って和田峠の入り口まで、長和町の町営バスが通っているので、場合によりこれを利用する。

 実際の行程は以下のように考えました。

 前回の旅行で、長久保宿まで到達しておく。

 今回の旅行では、自宅を出て、北陸新幹線上田駅からバスで長久保宿まで行き、そこから和田宿まで歩く。(8kmくらい)

 和田宿で宿泊する。(以前は本亭旅館さんがありましたが、今は廃業となっています。)

 2日目、和田宿を出て、和田峠を越えて、下諏訪宿に下りる。(ちょっときつい23kmほど。)

 中央線下諏訪駅から帰宅する。

 このような計画です。

 2011年の大型連休を利用して攻略に出かけました。本亭旅館さんに宿泊するまでは予定通りでしたが、2日目が、朝から雨。当時は小学生の次男を連れて歩いていたので、安全を考えて、雨中の峠越えは断念。峠入り口まで歩いた後、町営バスで引き返し、そのまま帰宅しました。

 リベンジは、7月の海の日。再び本亭旅館に宿泊し、町営バスで峠入り口まで行き、和田峠を越えて下諏訪宿へ到達しました。天気はまずまず、素晴らしい山行となりました。次男は相当疲れたようでしたが、よく頑張りました。

 下諏訪宿は温泉地でもあり、魅力的な温泉宿がたくさんあります。ここでで宿泊して、旅を続けてもよいと思います。(塩尻宿まで15km)

 峠越え23kmがきつければ、和田宿から峠の入り口まで長和町営バスを利用して、距離を短くすることもできます。また、下諏訪側も「樋橋」というところから下諏訪宿まで下諏訪町循環バスがあります。両方使うと、歩く道のりは約10kmほどになります。

 現時点では、本亭旅館さんがなくなってしまったので、別の戦略が必要です。長久保宿と和田宿の間に「民宿みや」さんがあり、和田峠まで送迎してくれるそうです。ここを活用するしかなさそうです。

 

 

和田峠の入り口

 

和田峠頂上から下諏訪方面を望む

 

 

2 旧羽州街道 小坂峠及び金山峠の攻略

 羽州街道は、福島市の少し北の桑折(こおり)宿で奥州街道と分かれ、出羽国へ向かいます。現在の奥羽本線は、福島から板谷峠を越えて米沢へ向かってます。かつて米沢藩が参勤交代に使っていたルートです。秋田藩庄内藩などは、羽州街道、すなわち桑折から小坂峠を越え、七ヶ宿を通って上山へ抜けるルートを使っていました。板谷峠は標高が高く、現在でも難所として知られています。小坂峠の方が標高が低く、抜けるのが楽なような気がします。なぜ、奥羽本線板谷峠ルートをとったのでしょうか。疑問です。

 そんなわけで、桑折宿には東北本線桑折駅があり、上山宿には奥羽本線かみのやま温泉駅がありますが、その間の現在の宮城県七ヶ宿町には鉄道路線がありません。この区間をどう攻略するのか、戦略が必要です。

 調べてみると、ありがたいことに七ヶ宿町の中心、旧関宿に「七ヶ宿館」という旅館があります。桑折駅からここまで25kmで、小坂峠を越えはしますが、なんとかなる道のりです。

 問題はその先で、金山峠を越えて、現在の山形県かみのやま温泉駅まで行くのに、旧関宿から32kmあります。これはちょっときつなと思い、さらに調べると、関宿から金山峠下のかつて間宿があった干蒲(ひかば)集落まで、町営バスが出ていることがわかりました。また、金山峠を越えたところの赤山集落から上山市内へ路線バスがあることがわかりました。これを使えばどうにかなりそうです。


 そこで、次のような戦略を立てました。

1日目

東北本線桑折駅から旧羽州街道を通り、小坂峠を抜けて、七ヶ宿町関宿まで歩く。

七ヶ宿館に宿泊。

2日目

関宿から羽州街道を間宿干蒲まで歩き(約17km)、町営バスで関宿に戻る。

七ヶ宿館に宿泊。

3日目

関宿から町営バスで干蒲まで行き、そこから金山峠を越えて上山宿まで歩く。

かみのやま温泉駅から帰途に着く。

 

 この計画に基づき、2023年の大型連休中に決行しました。3日間とも好天に恵まれ、2日目、3日目は比較的余裕があったので、2日目は、町の温泉施設でリゾート気分、3日目は、古い街並みが残る上山市の楢下(ならげ)宿と、かみのやま温泉を堪能することができました。

小坂峠頂上から桑折宿方面を望む

干蒲のバス停

金山峠頂上付近にある金山峠不動尊

 この他にも、たくさんの事例がありますが、今後、少しずつ私の旅の模様を紹介していきたいと思います。乞うご期待!

 歩き旅は、基本的に自由で、どんなルートで、どこへ向かって歩いて行っても構いません。自由ということは、裏を返せば、主体性が必要ということです。目標を定めて、自らの意思で道を選び、歩いていく。この主体性の発揮こそ、歩き旅の醍醐味と言えそうです。

 

 次回は、「雨もまた楽し」で、天候による楽しみ(どちらかというと試練)について述べたいと思います。